施工事例
床下の【腐朽菌やカビ】の発生と湿気対策について
合志市のF様邸は築年数30年以上の建物になります。
長年、シロアリの調査は行っていないとのことで、まずは無料でのシロアリ調査をご依頼いただきました。
早速、床下に入るため畳をめくったところ、真っ先に目についたのが床板の表面に付着した
『褐色腐朽菌』(かっしょくふきゅうきん)でした。
褐色腐朽菌?
聞きなれない言葉かと思いますが、簡単に言うと、木材を分解し、強度を低下させる菌のことを言います。
腐朽菌は木材中の成分(リグニン、セルロース、ヘミセルロース)を栄養に変えて分解するため、木材の強度が低下し、建物の構造に影響を及ぼす可能性があります。
人間でいうところの「骨粗しょう症」といった感じで、木材がもろくなるという表現がわかりやすいのかなと思います。
目次
木材腐朽菌の種類
木材に発生する腐朽菌は、主に3つの種類に分類されます。
①褐色(かっしょく)腐朽菌
木材の表面から侵入して、木材の表面から内部に向けて分解していく菌類で、褐色の変色が見られます。
②白色(はくしょく)腐朽菌
木材の中心部分を分解する菌類で、木材が白っぽく腐っていきます。
③軟(なん)腐朽菌
木材の中心部分を分解する菌類で、木材が黒っぽく軟らかく腐っていきます。
腐朽菌による被害を防ぐためには、建物の湿度を管理し、木材に水分が蓄積しないようにすることが重要です。
また、木材を使った建築物の場合、建物の中の空気の流れを良くすることで、木材表面の湿度を下げることも有効です。
さらに、木材に特殊な薬剤を塗ることで、腐朽菌に対する耐久性を高めることもできます。
↓ F様邸の床下
木部の表面のこげ茶色になっている部分が褐色腐朽菌になります。
実際に木部の表面をマイナスドライバーで触れると非常に柔らかい状態になっており、木材の強度が低下していました。
腐朽菌の発生条件
このような腐朽菌は高温多湿な環境を好み繁殖条件には、水分、温度、空気(酸素)、栄養(木材)が必要で床下の環境が以下の条件に当てはまる場合は特に注意が必要です。
①湿度が85%以上
②木材の含水率が20%以上
③温度が20度~30℃
木材腐朽菌とシロアリ被害の関連についてですが、セルロースなどの分解性生物にはシロアリを誘引する作用があり、木材の腐朽している箇所はシロアリ被害を受ける可能性が高まると言われています。
私の経験においても木材腐朽菌の発生する条件と、白蟻の中でも特に湿気を好む「ヤマトシロアリ」が発生しやすい環境はほぼ一致しているように感じます。
皆さんは、ご自宅の床下がどのような環境になっているかご存知でしょうか?
実はF様ご自身も、まさかここまでの状態になっているとは思ってもなく、大変驚かれていらっしゃいました(;’∀’)
腐朽菌への対策
それではこのように腐朽菌が発生していまっている場合の対策についてご説明します。
①床下環境の改善
腐朽菌による被害を防ぐためには、建物の湿度を管理し、木材に水分が蓄積しないようにすることが重要です。
先ほどお話ししましたように腐朽菌の発生には
『水分』『温度』『空気(酸素)』『栄養(木材)』
が必要になります。
この中で対策を講じるとすれば『水分』の量を減らすことが最も現実的と言えます。
木材を使った建築物の場合、床下の空気の流れを良くすることで、木材表面の湿度を下げることも有効です。
さらに、木材に特殊な薬剤を塗ることで、腐朽菌に対する耐久性を高めることもできます。
それでは、個々の具体的な対策についてご説明します。
床下換気扇・除湿器
機械によって強制的に床下の換気を行います。
床下に風の通り道を作ることで木材を乾燥に近づける効果が期待できます。
換気扇には次のような役割があり、適切な箇所に適した機種を設置することが重要です。
①排気型 床下の空気を出す
②吸気型 床下に空気を送り込む
③攪拌型 床下の空気を攪拌(かくはん)させる
床下換気扇は、湿気やカビの発生を防ぐために非常に重要な役割を果たします。
床下には、地盤からの湿気や雨水の浸入によって湿気が蓄積されることがあります。
この湿気がたまってしまうことで、カビやダニの繁殖につながるため、床下換気扇が有効とされています。
ただし、床下換気扇が必要なのかどうかは、建物の地域や条件によって異なります。
建物が湿度の高い地域にある場合や、床下空間が狭く換気しにくい場合は、より重要性が高くなります。
そのため、建物の状況や地域の気候条件などを考慮して、設置を検討することをおすすめします。
防湿シート
床下の土壌から上がってくる湿気を抑える目的で、土壌面をすべて覆うようにシートを敷き込みます。
防湿シートを敷くことで、地面からの湿気を遮断し、床下空間の湿度を低く保つことができます。
ただし、防湿シートを敷く際には、適切な厚みや強度があるものを選び、施工方法にも注意が必要です。
また、床下換気扇と防湿シートを併用することで、床下空間の湿気を効果的に排出することができます。
シートの種類によってはシート自体に吸湿性能を持った商品もあります。
調湿剤・炭
調湿剤にはこの写真のように天然の石(ゼオライト・シリカゲルなど)や活性炭、その他にはクッション程度の大きさの調湿マットがあります。
これらの素材は、湿気を吸収して蓄積し、湿度が下がると水分を放出する性質があります。
そのため、床下に設置することで、湿度を適正範囲に保つことができます。
また、脱臭効果もあるため床下の独特な臭いを軽減させることにも有効です。
ただし、調湿剤は適切な方法で設置を行わないと、調湿剤自体にカビが発生することがあります。
その場合は定期的に交換が必要となり、大変な手間とコストが発生してしまうため、建物の状況や地域の気候条件などを考慮して、専門家に相談することをおすすめします。
通気口の作成
そもそも、床下への通気が悪い場合や通気口の数が少ない場合には、新たに通気口を作成することも可能です。
通気口を新設する場合は、建物の耐久性に影響のない箇所を選んで行います。
通気性に優れた『換気プレート』を設置して完了です。
『換気プレート』は害虫や害獣が入りにくい構造でサビにも強いステンレス製のものをお勧めします。
また、通気口周りには荷物を置いたりせずに、常に風が入りやすい環境を心がけましょう。
②木材への防腐処理
防腐剤(液体)を木部の表面に塗布もしくは散布して染み込ませます。
シロアリの薬剤に混ぜて吹き付けを行うことも可能です。
防腐剤の種類によってはカビの繁殖を防ぐ防カビ効果のある薬剤もあります。
防腐剤については床下の環境によって1年~5年程度持続します。
しかし、湿度の多い床下では1年も満たないうちに腐朽菌やカビが再発生することがありますので、やはり①の床下環境の改善を必ず行っておくことをおススメします。
床下調査ではシロアリ被害の有無だけではなく、このような腐朽菌の状態、水道管の漏れ、カビの発生なども確認することができます。
また、過去には床下がコンクリートで比較的乾燥しているお宅でも木材腐朽菌やカビが発生していたケースもありますので、定期的な点検もやはり必要ではないかと思います。
こちらの写真は別のお客様宅の【例】になりますが、こちらも木部の表面には広範囲に腐朽菌が発生していました。
床下全体に腐朽菌が発生しています。
浴室周りは特に発生がひどい状況でした。
腐朽菌と共にカビも発生しています。
カビはお住いの方の健康への影響が考えられます。
もし長年、床下の調査をされていない方で、床がブヨブヨしてきた、押し入れなどにカビが生えやすいなどの異常を感じる方は、一度床下の調査をお勧めいたします。
その原因はシロアリではなく、床下の環境によるものかもしれません。
私たちが日頃、目にすることが無いところで異常が発見されることがあります。
漏水
基礎のクラック(ヒビ割れ)
基礎の老朽化
シロアリ被害・その他害虫
調査の結果では、写真を撮らせていただきますのでその場でご覧いただくことができます。
もし、ご自宅の床下に興味のある方は、一緒にもぐって確認していただくことも可能です。
※その際は専用のツナギをお貸しします。
ご心配な方はお気軽に当社へご相談いただければ幸いです。